作家有栖が語り手のシリーズです。
学生有栖の長編3作は、探偵役、犯人、被害者が閉ざされた時間と空間でせめぎ合うという設定で、作家vs読者の推理ゲームとしてとても密度の高い仕上がりでした。作家有栖のシリーズは、探偵役が警察とともに事件に挑みそれを作家有栖が記録するというありふれたスタイルで、謎解きの難易度が低いわけではありませんが、学生有栖の長編3作のような濃密な雰囲気はありません。
また、探偵役の火村のキャラに陰影を与えたり、語り手の有栖と一部の登場人物に過去のつながりを設定したりと、人物描写に深みを与える工夫がなされていますが、語り手自身が事件に深く関わっている学生有栖物に比べると感情移入の余地は少なくなります。
というわけでこの作家の真骨頂を楽しめるのは学生有栖物ですが、『双頭の悪魔』で露呈したように、あのストイックなスタイルで趣向を凝らすには限界があります。その点、作家有栖物のスタイルだと設定の自由度が高くなります。
手の込んだ叙述トリックや物々しい設定を使わない作家なので、論理の密度が下がった分薄味になります。いささか2時間枠のサスペンスドラマ的な軽さがありますが、止むを得ないところでしょう。そこに不満を感じなければ、十分に楽しめます。
- 2006-04-30 00:42:15
- 有栖川有栖
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学生有栖が活躍するシリーズの第3弾。
前2作が学生有栖の一人語りであったのに対し、語り手は2人。事件も同時に複数箇所で進行します。明解な論理で勝負する作家だけに、前2作を超えるためにはこういう方向に向かわざるを得ないのでしょう。ずしりとした手応えがあります。
また、前2作では名探偵役の江神のキャラの描き方が弱かったのですが、『双頭の悪魔』では踏み込んでいます。
ただし、謎解きやストーリー展開には無理を感じます。江神の推理には推測が多くて迫力を欠きがちです。また、複数箇所で事件を並行させるという手の込んだ仕掛けの割りにあっけない幕切れ。論理的には落ちがついても、ストーリー的にはやや不完全燃焼でした。
作家自身が自分の作風の限界に挑んだ意欲作であり、諸々の欠点はオーバーロードゆえと思います。

- 2006-04-30 00:41:58
- 有栖川有栖
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殺された刑事が幽霊となって事件の真相を解明する異色作。幽霊の刑事が一人称で語っていく手法はミステリーとしては異色ですが、映画などでは良く見かけます。
一見色物風ですがしっかり本格しています。謎解きはやや強引に感じられるところもありますが、この作家らしく緻密な論理で迫ってきます。
ラストはお約束の別離のシーン。事件解決を受けて、主人公の幽霊刑事は元婚約者と最後のお別れをします。展開が読めていても切なくなりました。ミステリー小説は意外性で読者を引っ張っていくのが基本ですが、ジャンルに関係なく、展開が読めていても感動させてくれるのが腕のいい作家だと思います。有栖川氏はこの作品でそうした力量の持ち主であることを証明しています。ミステリー作家でこういうことが当たり前に出来る人は案外少ないと思います。

- 2006-04-30 00:41:38
- 有栖川有栖
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学生有栖が活躍するシリーズの第2弾。
欠点が少ない作品です。論理的にもストーリー的にも無理がありません。この作家の明快な論理性を尊ぶスタイルは一つ間違うと凡庸さに陥りかねませんが、臨場感溢れる描写で気をそらせません。仮に読んでいる途中で結末が見えたとしても、読み応えがあります。
前作『月光ゲーム』とは別の女の子が登場して、またまた学生有栖の心は揺れ動きますが、この部分の描き方も相変わらず巧み。
最高傑作というのではないですが、この作家の良さが最高の純度で味わえる作品の1つ。

- 2006-04-30 00:41:18
- 有栖川有栖
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この作家のデビュー作であり、学生有栖が活躍するシリーズの第一弾。
有栖川有栖は新本格の中でも論理性を前面に出す作家で、『月光ゲーム』は典型的な作品。
容疑者が大学生17人で、さすがにキャラクターの描き分けがうまくいってません。とてもじゃないが頭に入りません。しかし、この点をのぞけばとても高水準。肝心の謎解きは鮮やか。叙述トリックのような姑息な手法に頼らない正攻法。新本格作家のデビュー作をいくつか読みましたが、それらと比較して筆致の安定度は抜きん出たものがあります。
個人的にミステリー部分より面白かったのが学生有栖の恋物語。サイドストーリーではなく、メインの展開に絡められているし、学生有栖の揺れ動く心理の描写は読ませます。けっこう感情移入してしまいました。二十歳前後の男の恋愛心理の息苦しさををここまで生々しく感じさせてくれる作品はめったに無いと思います(恋愛小説を読まないわたしが知らないだけかも・・・)。

- 2006-04-30 00:41:01
- 有栖川有栖
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