ぶっき Library... 瀬尾まいこ

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読んだものの感想を自由に。



温室デイズ (瀬尾まいこ)

11月にいじめ自殺に関する記事をアップした際に、『図書館で本を借りよう!~小説・物語~』のすのさんから、『温室デイズ』の書評記事のトラックバックをいただいた。気になったので、遅ればせながら読んでみた。

何が気になったかというと、いじめに対する探究心よりも、あの瀬尾まいこが、いじめをテーマにどんな小説を物したのか?という好奇心。

瀬尾本はここにアップしている2冊しか読んでいなくて、それだけでこの作家を語るのは軽率なのだけど、持ち味としての雰囲気の良さはあるけれど、思慮浅く感じられて、ちょっと痛い感じ。

そんな彼女が、“いじめ”という困難なテーマにチャレンジしたという。いくら現役中学教師という強みがあるとは言っても、いくら旬な話題ではあっても、ちょっと軽率ではないのか?角川書店の口車に乗せられて踏み誤ったのではないか?
などと危惧したけれど、これはなかなかいい本でした。

過去に読んだ2作品と違って、この作品はリアリズム小説。
作者の意識はチャライ妄想に走らず、現実に向かっている。
中学校という“温室”が下卑た悪意をもぬくぬくとさせている現実、そして集団の悪意が持つ無機的な不気味さがちゃんと伝わってくる。
心理描写は相変わらず甘口で、テーマのわりに圧力は乏しいけれど、つらいテーマにしては読みやすいとも言えるわけで、一概に欠点とは言えない。

この作品は“いじめ”に対してまったく楽観的ではない。あるところで境界線がひかれていて、それを超えたところでは思いは伝わらないし、理解しあうこともできない。二人のヒロインは一貫してその犠牲者で、前向きに働きかけども報われない。
しかし読後感は苦いばかりではない。いや、むしろ幾ばくかの心地良さに浸れた。それは、二人のヒロインが成長しているからだし、彼女たちは“温室”には失望したかもしれないけれど、人間には失望していない。

物足りない点は、ヒロインの一人みちると不良学生伊佐の関係が中途半端にしか描かれていないこと、SS山川の花壇の防衛方法が陳腐に感じられる点。
でも、瀬尾まいこ作品でこんな風に適度な感情移入を楽しめたのは意外な収穫。
onsitudays.jpg
  1. 2007-01-21 14:40:23
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図書館の神様 (瀬尾まいこ)

《警告》 ボコボコに酷評してます。瀬尾まいこファンの方はご注意を!

読んでて一番イライラするのはディテールに次々と違和感が湧いてくる小説。これはそんな小説でした。

たとえば・・・(ネタバレ)
料理教室での指導方法について真剣に悩んでいる不倫相手に対して、その欠点を分かっていながらアドバイスしないことが正しさとして描かれています。こういう微妙な価値観があちこちに。

たとえば・・・(ネタバレ)
弟の底抜けな優しさの例といいながら、優しさとは関係なさそうな、主人公の性格的な欠点を遠まわしに指摘したエピソードが紹介されます。それとも遠まわしに指摘することが底抜けな優しさということなのでしようか?いずれにしても、こういうアバウトな文章がいたるところに。

たとえば・・・(ネタバレ)
どんなに寂しくても困っていても自分から不倫相手に電話をしたことがないといいながら、たかだか夏目漱石の小説が怖かったくらいで気軽に電話をして、それが破局のきっかけになります。大事なシーンなんですけどね。こんな感じで、演出意図と描かれている出来事が一致していない場面がちらほら。

こんな微妙にズレたような、すわりの悪い場面や描写がいたるところにあって、読み進むほどにモヤモヤが募っていきます。モヤモヤが大きすぎて、中身を味わう気持ちになれません。

この作家、たぶん悪性の天然ボケです。別掲の『天国はまだ遠く』ではそこが微笑ましさにつながっていたけど(浮世離れしたお話なのが奏功したのかな?)、『図書館の神様』ではひたすらにウザイ。空気を読めない人とか異常に飲み込みの悪い人と会話をしているような不快感。
一人称語りなので、この不快感がそのまま主人公への不快感に結びついて、とても感情移入できませんでした。

あと、主人公の人物造形はどうかと思いました。失敗の傷心から屈折気味になっている人物、という設定なのですが、伝わってくるのは頭の悪さとふてぶてしい無神経さです。造形力が設定に追いついていない、と感じられます。

読みやすさとかユーモア感覚の楽しさとかストーリーの組み立て方とか感心するところはあったけれど、焼け石に水でした。

評判が良さそうだから手に取ってみましたが・・・わたしが異常に神経質なのでしょうか?そうかもね。生きにくいわけだ・・・
toshokanxkamisama.jpg
  1. 2006-05-01 16:15:45
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天国はまだ遠く (瀬尾まいこ)

読み始めて間もなく「う~ん、この感じはなんだっけ!?」って感覚にとらわれました。このノリ、この雰囲気。思いついたのが昔読んだ少女コミック。小中学生の頃、暇で死にそうなときに妹の本棚から引っ張り出して読んでいた少女コミック。
最近の少女コミックのことは分かりませんが、当時は、美人じゃないけど可愛げがあってちょっと天然入ってる普通の女の子が、学園の女の子たちの憧れの的であるマネキンみたいな男子とラブラブになる、みたいなパターンが流行っていました。『天国はまだ遠く』は学園物ではないし、マネキンみたいな男子も出てきませんが、主人公のキャラがまんまハートウォーミング系少女コミック。微笑ましい失敗や誤解をやらかして、楽しませてくれます(こういうの、嫌いじゃないので)。
また、民宿の男はマネキン美男子でこそ無いけど、少年ぽい遊び心と純情さがあって、無神経ではない程度に大雑把で、きもちミステリアスで、ずうずうしく迫ったりしないであくまでも温かく見守るだけ、みたいな典型的少女コミックキャラ。

そのかわりにシリアスな部分もかる~いノリで描かれています。決して少女コミックでない『天国はまだ遠く』では、ヒロインは思いつめて自殺を試みたり自分の生き方を見つめたりするのですが、何だかオママゴトなんですね。仕立ては文芸風だけど、精神的にはハートウォーミング系少女コミック。

突き詰めて読むとあちこち物足りなくなるけど、作品自体が全然背伸びしていないので粗探ししようという気持ちにならないし、オママゴト風であることがほどほどに癒しの効果を生み出しています。
頭の中を空っぽにしてそよ風にふかれているような心地良さがあって、特に魑魅魍魎じみた小説(古川日出男氏の『アラビアの夜の種族』のことです)の口直しには最適でした(笑)。
tengokuxmadatooku.jpg
  1. 2006-05-01 16:15:05
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