これはかなりの傑作ですねぇ、きっと。まあ一般的な基準で評価するといくらでもケチはつけられそうですが、そういう(人物造形とかリアリティを重視するような)読み方をする人はそもそもお門違いなわけで、現代的な謎解き小説の様式美が極められた傑作として長く読み継がれそう。
面白さの点では『十角館の殺人』もひけをとらないと思うけど、この作家の筆力を味わうなら『時計館の殺人』でしょうね。読んでない綾辻作品がまだまだあるので早計かもしれないけど・・・
様式美という言葉の意味がピンとこなければ、時代劇の『水戸黄門』『遠山の金さん』やアニメの『ドラえもん』あたりを連想してください。登場人物もプロットも展開もお約束だらけ。でもそのすべてが徹底的かつ至れり尽くせりなのです。人生の綾とか心の機微どころかキャラの魅力すらなくて、ひたすらにミステリー的な謎解きや駆け引きの面白さがストイックに追及され、そして極大化されています。
こうなったらリアリティとか人生の綾とか心の機微なんか必要ないです。そんなものが入り込んだらかえって無機的な様式美が損なわれてしまいそう。通常と全然違う読み方をしてしまいましたが、進んでそれをさせるだけの完成度と洗練があります。まあジャンル小説だからダメな人は「何がいいの?」かもだけど。
ちなみに40%くらい読んだところでメイントリックの原理は見当がつきました。推理したわけではなくて、舞台設定から類推しました。トリックとして安直ではないのだけれど、お約束だらけだからなんとなく見えてしまう。にもかかわらず予想をはるかに上回る巧緻な作り込みと様式美のおかげで満喫しました。
キャラ作りとかタッチの魅力とかじゃなくて完成度と練磨で読ませる作家のようです。ということは完成度や錬度が落ちれば途端に色あせてしまうわけで、ある意味他の作品に手を伸ばすのが怖いです(笑)
- 2006-04-30 00:39:42
- 綾辻行人
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デビュー作でありシリーズ第一弾。
別掲の通り、先に読んだシリーズ第二弾『水車館の殺人』の印象は惨憺たるものでした。それで、このシリーズへの関心はすっかりしぼんでいましたが、気を取り直して評判の良さそうな本作を手に取りました。
結果『水車館の殺人』とは別物でした。面白くて、楽しめました。
『水車館の殺人』では、読み進む気力を奪われるほどに人物描写が薄っぺらでした。キャラ的な魅力も乏しかった。ところが、『十角館の殺人』ではそのことが気にならないどころか、自然に物語の世界に入り込めました。思うに『十角館の殺人』の登場人物たち(=学生)は、執筆当時の作者にとってイメージしやすい存在だったのでしょう。それで、自ずと存在感を出すことが出来たのではないでしょうか。
また、登場人物が学生ばかりという設定はキャラが曖昧になりやすいのですが、この点でもストレスはありませんでした。
ただし、探偵役の島田潔は相変わらずパッとしません。推理は、動機に対する憶測が多くてまるで凄みを感じません。キャラ的にもさっぱり魅力を感じません。冴えない探偵役、という設定では無さそうですが・・・
謎解きに関しては緩めです。ガチガチではありません。しかし、理にかなっているし、意外性はあるし、ひねりも効いていて、かなり楽しめました。
ミステリーは一応推理しながら読みますが、じっくり推理しながらというのではありません。あくまでも、読み進むペースの範囲内での推理。こういう読者にとっては、あまりガチガチな論理よりは、この作品のように程好く緩い方がスムーズに読めます。

- 2006-04-30 00:39:24
- 綾辻行人
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「囁き」シリーズの1作目です。
別掲の『水車館の殺人』同様人物の描写は弱いものの、こちらは比較的すんなり読めました。主人公の少女の記憶が事件の鍵を握る展開だけに、彼女の心理が丁寧に描かれていて、そのことが奏功したようです。
物語の展開も少女の視点から丁寧に描写されており、臨場感もそこそこあって、読み手の気持ちを逸らさないレベルにはあります。ホラーの要素も入っていて、サービス精神が感じられます。
緻密な謎解きも楽しめました。
ライトノベル風であることに変わりはありませんが、別掲の『水車館の殺人』に比べると、この作家の本領が感じられました。

- 2006-04-30 00:39:07
- 綾辻行人
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「館」シリーズの第2弾。
新本格の大物作家なので読んでみましたが、期待はずれでした。
謎解きの部分はそれなりには楽しめました。そもそも事件の舞台である施設・建築物にカラクリがあるというパターンは好みではありませんが、そのわりには読めました。
人物の描写はどうしようもない感じです。どれも魂が宿ってない操り人形。作者は頑張って心理描写していますが、むなしさを超えてウザク感じました。説明がましいだけ。途中から心理描写をすっ飛ばして読みました。類型的な人物設定とするならせめて魅力のあるキャラにして欲しいところですが、この点でも探偵役を含めてパッとしません。新本格ミステリーといえども、謎解きへの興味だけで読者を引っ張るのは難しいと思います。
また、描写は過去と現在を行きつ戻りつするのですが、同じ理由から物語に対する興味が持続しませんでした。
これに懲りて他の「館」シリーズを読んでいないので、この作品がサンプルとして相応しいのかは未確認です。

- 2006-04-30 00:38:50
- 綾辻行人
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