タイムスリップ&タイムパラドックスをネタにした、大人のためのメロドラマ。主要な登場人物は40歳前後という中年仕様です。読み気を誘う仕掛けが凝らされているので、他の年代の人も楽しめそうだけど、若い読者では同調しきれない部分が出てくるかも。
タイムパラドックス物らしく、「なぜ?」と「どうなるの?」を巧みに織り交ぜて、こちらの気持ちを逸らせません。そこに、中年男女の思いが多様に折り重なって行きます。ロマンティックとか、血湧き肉踊るという世界ではなくて、甘さを伴わない、苦い切なさが支配的。アダルトな雰囲気です。
個人的にタイムパラドックス物は好きなので、楽しめたからそれでいいのですけど、主人公=語り手以外の登場人物が描き足りていなくて、ことにストーリーの核となるタイムスリップ体質の人物(=北川)の思いが伝わってこない(あるいは納得感が得られない)のは、ちとキツイ。ストーリーの核である北川を主人公としなかったのは、謎解きや人間関係に多様性をもたらすためのアイディアだと思うけど、それならそれで、北川の思いを掘り下げるためのさらなる演出が欲しい。
この作家の作品は初めてですが、いまいち作家としてのキャラがつかめませんでした。理屈っぽくない白石一文のようであり、甘ったるくない大崎善生のようでもあり、不器用な東野圭吾のようでもあり...いや、東野圭吾は全然違うか...

- 2006-05-01 16:05:27
- 佐藤正午
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