ぶっき Library... 栗田有起

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読んだものの感想を自由に。



マルコの夢 (栗田有起)

栗田有起はこれで4冊目。ひょっとしてオレはこの人のファンなのだろうか?いや、過去に読んだ3冊の感想を見る限り、ファンとは言い難い。ファンにはなりきれないのだけど、この人の持ち味であるファンタジックな味付けと、それを含めた人懐っこい作風に好感を感じていて、期待を込めて読み続けているというところ。

物足りない部分は作品によって微妙に異なるけど、煎じ詰めるとディテールの希薄さ。『豆姉妹』(『ハミザベス』所収)や『ABARE・DAICO』(『お縫い子テルミー』所収)のような現実的設定の作品はまだしも、現実的な世界の中にファンタジックな設定を持ち込むパターンの作品(『ハミザベス』『お縫い子テルミー』『オテルモル』)でディテールが薄いと、現実のパートが非現実のパートに侵食されて、グダグタの絵空事に堕してしまう。読んでいて「本当にこんな状況があったとしたら・・・」という方向に想像が膨らんでいかない。

で、この『マルコの夢』。
ここでも現実的な世界の中にファンタジックな設定が持ち込まれていて、しかもファンタジー色かなり濃い目。問題のディテールは・・・相変わらず。ファンタジー色が濃い分、絵空事度は過去最高で、こうなるとほぼ創作おとぎ話。でもおとぎ話として読もうとすると、今度は主人公の家庭事情みたいな中途半端に生々しい部分が浮き上がる。

個性的なスタイルというよりは、バランスが悪いんだと思う。大変僭越だけど、「こんな素敵な話を書きたい」みたいな願望が先走って、筆力が追いついていないように感じる。

ディテールの密度を上げる方向でステップアップしてくれると、お好み通りの作風になるので、それを心待ちに読み続けてきたわけだけど、そろそろ潮時か・・・?
marukoxyume.jpg
  1. 2006-05-01 11:55:11
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オテル モル (栗田有起)

この作家を読むのは3作目。

2作品に対する自分の感想を読むと必ずしも好意的ではない。読むといろいろ気になってしまう。でも、独特の人懐っこい作風のせいか不快感は残らない。ということは、作家との相性はそんなに悪くないということだろう、きっと(笑)

「オテル」とはホテルのこと。快眠が売りの一風変わったホテルを舞台に、フロントで働くことになった女の子の物語。
メルヘンチックな雰囲気はなかなか心地良かったし、過去の2作品に比べると描写の密度は上がっていると思う。眠たさの表現とか、主人公の危なっかしさの描き方は上手いと思った(眠気覚ましに深夜のホテルで踊りまくっちゃうシーンとか)。このあたりはその気にさせられた。

でも、完成度みたいな読み方をすると失敗作なんだろうなぁ。たぶんホテルの仕事を通して屈折した感情が解きほぐされていく、みたいなところを狙っているのだろうけれど、架空の存在であるホテルがいかにも描き足りなくて、狙い通りの効果に至っていない、というか空中分解している。たとえば、ホテルの従業員や常連客あたりを主要人物に加えるとか、ホテルの実像が浮き彫りになるような事件を起こすとかしてホテルに実体を与えていかないと、主人公の内面変化が焦点を結ばない。

この作家には、女性的というよりも「女の子」的といいたくなるような浮遊感があって、これはなかなか魅力的な個性なのだけれど、それを如何に読み応えという「重さ」に落とし込んでいくかが鍵だと思う。
さもなくば、『ハミザベス』収録の『豆姉妹』みたいな楽しく笑えてちょっといい話路線を極めていくか...
otelmol.jpg
  1. 2006-05-01 11:54:47
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お縫い子テルミー (栗田有起)

表題作『お縫い子テルミー』と『ABARE・DAICO』の2編が収録されています。
ともに主人公=語り手の内面の成長(変化)を描いたライト感覚の純文学(?)。設定も語り口も軽いので読みやすいです。

『お縫い子テルミー』はちょっとファンタジー入ってます。主人公が流しのお縫い子という架空の職業設定。
なかなかチャーミングな作品ではありますが、アプローチとしてはなんとも中途半端。というのは、この作品は、説明的な記述を極力排除して場面の描写を積み重ねることで主人公の成長(変化)を読者に感じ取らせる、という純文学ライクな演出法をとっているのですが、こういう演出法では当然のことながら読者をしっかり各場面に感情移入させることが必須で、特に奇抜な主人公を設定してしまった『お縫い子テルミー』では奇抜さによる異和感を乗越えて引きずり込む腕力なり作り込みが必要不可欠となりますが、この点が弱すぎます。語り口を含めてふんわりと描いてしまっていて、軽やかで柔らかいタッチに魅力は感じるものの、テーマは心に響いてきません。やっぱノリだけじゃ無理でしょ。

一方の『ABARE・DAICO』は現実的な設定ですが、主人公が子供=語り手のせいか、こちらも軽やかでマイルドな仕上がり。全体にぬるめだし終盤は取って付けた感じがしたけど、子供=語り手と同じ目線で物語の世界の出来事を経験することに心地良さを感じました。『お縫い子テルミー』のような創作上のチャレンジはなくて、良くも悪くも肩の力が抜けています。

この作家の魅力は味わえるけど、読み応えはイマイチかな・・・
onuikotelme.jpg
  1. 2006-05-01 11:54:24
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ハミザベス (栗田有起)

表題作『ハミザベス』と『豆姉妹』の2編が収録されています。

軽やかでユーモラスで微笑ましくて、女の子女の子した作風です。一応主人公の内面の変化とか成長が肝にすえられていて、内面のドラマとして迫ってくるような訴求力は無いけれど、甘ったるさの歯止めとしては有効に機能していると感じました。デザート系の口当たりには違いないのだけれど、下品な甘さではないので、けっこうスンナリと読めました。

表題作『ハミザベス』は、軽やかでユーモラスな語り口の浮遊感がテーマ(本書の著者紹介によると母娘の自立だとか)の重力を完全に消しているので、訴えてくるものとか伝わってくるものはありません。頭ではテーマ性が理解できるけど、心に響いてこない。嫌な感じは無いけれど、何も残りませんでした。

『豆姉妹』も同じような感じなのですが、ユーモア感覚が冴え渡っています。特にアフロとか笑えました(読めば分かります!)。かなり羽目をはずしているけど、主人公の内面の変化に沿っているせいかそんなに安っぽい感じがなくて、良質のコメディに仕上がっていると思います。
hamizabesu.jpg
  1. 2006-05-01 11:53:59
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