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魍魎の匣 (京極夏彦)

京極堂シリーズは随分前に制覇しましたが、頭の中で混ざってしまって、題名を聞いてもどれがどれやら分からなくなっています。

そんな中で『魍魎の匣』は比較的印象の強い作品。箱に収まった少女と奇怪な研究所のイメージが残っています。久々に読み返してみました。
改めて読み返してみると、雑然としていて、いろいろと粗が目につきます。しかし個性と表現力のパワーは圧倒的。

シリーズ全体に言えることですが、奇怪な雰囲気を濃厚に漂わせつつも、技巧は絢爛としています。複数の登場人物に視点が置かれ、適材適所に視点の置き方や文体が使い分けられています。さらに小説内小説まであります。演出としては過剰気味ですが、そのいずれもが様になっています。
お得意の薀蓄は底知れぬ情報量を感じさせますが、一人歩きすることなくストーリーに噛み合わされています。

基本事項も押さえられています。主要人物の心の動きがじっくりと描かれ、しかも話の展開にしっかり絡んでいます。さらに、かなりの大作ですが、箱のイメージを人物のキャラなどあちこちに投影させることで統一感が醸成されています。

この作家は溢れんばかりの表現意欲と技巧を解き放つことに創作の喜びを見出しているようで、お行儀良くまとめることには関心が薄そうです。だから、過剰ゆえの不恰好さは美点と理解したいのですが、そうだとしても、以下の二点にはひっかかりました。
まず探偵役京極堂の弁舌。彼が読者を洗脳してしまうことで奇想天外な犯罪に説得力を持たせる、という試みがなされているようですが、あまり鮮やかではありません。話が行ったり来たりし過ぎて、混乱させられこそすれ、洗脳には至りませんでした。また、京極堂に都合の良い(推理しやすい)設定が数多くあって、まあミステリーではありがちなことですが、少し白けました。
二点目は女性キャラ。描き方が下手とは思いませんが、さりとて魅力的とは言い難く、この作品では女性キャラが重要なだけに、物足りなく感じてしまいました。

そんなこんなで、文庫本にして全1000ページの8割くらいまでは、退屈はしないものの引き込まれることもない、という薄曇状態でしたが、そんな気分は終わりの2割で一掃されました。パワー全開で畳み掛けてきます。それまでの伏線の数々が様相を一変させて、別の物語として怒涛のような勢いで再構築されていきます。一般的な意味でのミステリーの謎解きからは逸脱していて、論理を超えたところでの壮絶な心理ドラマに仕上がっています。
moryoxhako.jpg
  1. 2006-05-01 11:51:04
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どすこい(仮) (京極夏彦)

京極堂シリーズは全巻制覇しているのですが、京極作品をここで採り上げるのは初めてです。

読書はある意味作家との駆け引きです。駆け引きと言うからには大なり小なりゲーム性が伴います。駆け引きのゲーム性を最大限に駆使するのがミステリー。それだけにミステリー作家は技巧面で果敢であるように感じられます。

『どすこい(仮)』は7つの短篇と中篇の組み合わせによる連作作品集です。
ちょっとくどくてシュールな笑い満載ですが、各作品の連携方法が奮っています。ストーリーに連続性を持たせたり登場人物をキーに紐付けするのはありがちですが、この作品集では形式とか方法論で全作品が紐付けされています。具体的に挙げると、
〇各作品を他の作家の有名作品のパロディとする
〇「地響きがする-と思って戴きたい」というセンテンスで開始する
〇力士と相撲技四十八手がプロットに絡む
〇各作品がメタフィクションとして連携
という具合(漏れがあるかも・・・)。
お笑い系の作品でこれだけ技巧を凝らすところにこの作家の底力を感じます。技巧に遊び心があります。個人的には、メタフィクション(小説内小説)なんていうのは子供だましの芸だと思っているので、こんな風に軽いノリで扱ってくれた方がしっくり来ます。

こういう凝りに凝った作品集は好きなのですが、おそらくこの作品集の好悪は笑えるか笑えないかで決まるのでしょう。ちょっとしつこいタイプの笑いだけに・・・
dosukoi.jpg
  1. 2006-05-01 11:49:49
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