ぶっき Library... 奥田英朗

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読んだものの感想を自由に。



イン・ザ・プール (奥田英朗)

続編『空中ブランコ』を先に読んでいた。

面と向かって「読んだほうがいい?」と訊かれたらとりあえず薦めておく。よくできた娯楽系短編集だと思うから。ひねくれ者でなければ、それぞれの楽しみを見出せる本だと思う。

伊良部という奇人を狂言回しに、面白おかしく現代人の心の淀みをあぶりだす。各話の主人公たちが抱える心の問題が、良くも悪くもありのままな伊良部の生き様との対比によって浮き上がってくる。
伊良部の使い方に奥田英朗らしいうまさを感じる。伊良部の中に悩める現代人に対する作者なりの処方箋を集約しつつも、必ずしも伊良部その人を全面肯定していない。だから、作者のメッセージはわりあいはっきりしているけれど、押し付けがましさはまったく無い。このバランス感覚は素敵。

ただ、ちょっとひねくれているわたしには食い足りない。物語りは常に決められた枠の中で展開するから、何作か読むうちにまんねり感が頭をもたげてくる。伊良部の型破りさも、型にはまっている。

収録5作品は粒がそろっているけれど、一番好みなのは『フレンズ』。


  1. 2008-01-14 23:26:07
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サウスバウンド (奥田英朗)

奥田作品は『最悪』『空中ブランコ』に続いて3作目になります。3作品も読めばある程度自分の中で作家像が固まってくるのですが、たまたま読んだ本の組み合わせがよくないのか、まだつかみきれません。

直木賞を受賞した『空中ブランコ』は、「あ~、うまいなぁ」と感じつつも、良くも悪くも、いかにも元雑誌編集者&元プランナー&元コピーライターが書いた小説って感じで、手際はいいけど小手先な感じがして、個人的には毒にも薬にもならない、って作品でした。

幸い、受賞後第一作の『サウスバウンド』にはそんな感じはないです。パワフルで、刺激的で、腹を割ったような面白さ。キャラクターの魅力的なデザインと、そんなキャラたちが織り成す人間関係の面白さでぐいぐいとページをめくらせる、という正攻法の面白さなんで、「お見事です!」と拍手を送るしかないです。長い作品だけど一気に読まされたし、読んでて素直に笑えたり、喜べたり、興奮したり、しんみりしたりできました。

(以下、ざっくりとネタバレ)
主人公は小学6年生の少年で、彼の視点から、型破りな父親の生き様が描かれます。
東京編というべき第一部と、西表島編というべき第二部の二部構成なんですけど、構成としてはちょっと冗漫です。
というか、父親中心に読むと、それなりにまとまっていて、第一部では都市生活に馴染めないですぶっていた彼が、第二部では故郷に帰ってパワー全開!という流れになります。

ところが、主人公の少年中心に読むと、第一部に登場した彼の魅力的な友人たちが放置されている感じ。わたしはてっきり、第二部では、彼らが夏休みか何かを利用して西表島にやってきて、第二部からの登場人物たちと入り乱れて、はじけた大団円になだれ込むに違いない、と期待しながら読んでいたので、終盤はややがっかり。
魅力的な第一部のキャラたちに再登場して欲しかったし、ストーリー展開としても、彼らが西表島に来てどう変わるのか、あるいは彼らを迎えた主人公が東京での生活をどう清算するのか、みたいなところを描いてくれたら、一層奥行きが出たと思うのだけど。なんだったら、続編でもいいです(笑)

後半に当たる第二部での父親の生き様は、なんらかのメッセージを読み取ることは可能だけど、演出としてはキャラ設定の範囲に収めていて、だから単なる強烈なキャラとしてあっけらかんと楽しめます。おしつけがましさがなくて、この作家のエンターティナーとしての優れたバランス感覚を感じます。
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  1. 2006-09-28 20:19:29
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空中ブランコ (奥田英朗)

ヒューマン系コメディ短編集です。5編収録。
型破りな精神科医伊良部が狂言回しとなって、各編ごとに心因性の悩みを抱えた人物が登場。ヒーロー特撮物や時代劇みたいに、展開は完全にパターン化されていて、

悩みの自覚

伊良部が「いらっしゃーい」と甲高い声で迎える

病状に関係なくセクシー看護婦がビタミン注射
その様子に食い入る伊良部

患者は退きつつも伊良部のペースに巻き込まれる

伊良部が相手の生活(主に職場)に飛び込んで天真爛漫に振舞う

そんな伊良部に振り回されるうちに、いつしか・・・

原則的に各編の差異は患者の職業と症状くらいなので、2~3編で飽きそうなもんですが、そんなことはなくて、退屈することなく5編を読み切れました。職人的な上手さ!面白さも、いい話っぽさもほどほどですが、平均値が高くて粒が揃ってます。
自覚的にパターン化しているのでしょうから、ある意味自信の表れか?

この本に限った話をすると、5編のうち伊良部の同窓生が患者になる『義父のヅラ』には若干の+αがあるものの、あまりにもパターンが出来上がっていて、伊良部のキャラ的魅力の点では物足りなかった。ただし、シリーズ物なので、主役のキャラについてこれ一冊ではどうこう言えないから、刊行順に『イン・ザ・プール』から手を付けたほうが良かったのかも・・・

それにしても、『最悪』(別掲)みたいな作品が書けて、かつこういう作品も上手いとなると、この作家は懐がかなり深そう。
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  1. 2006-04-30 12:09:11
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最悪 (奥田英朗)

三人称語りで人間を外側から(社会的背景、境遇、立場、生活etc)描き出していくスタイルですが、精緻で安定した筆致に目を瞠らされます。デビュー2作目にして実力派中堅作家の作と見まごう充実感。
ガチガチに作り込まれているので作品世界に馴染むまでは若干抵抗感を覚えましたが、ペースがつかめるとぐんぐんと引き込まれました(個人的な好みとしてはもう少し引き締まっていた方がありがたいのですが・・・)。

特に感心したのは、語り口自体は一貫してハードでシリアスなんですが、人間の滑稽さとかペーソス(どういう意味だっけ?)みたいなものが自然な感じで(=リアリティを崩さずに)ユーモアにつながっていること。人物造形力の裏付けがないとできない芸当だと思います。笑いの程度は「クスリ」「ニヤリ」止まりですが、緊張感を適度に緩和してくれます。
ちなみに、いかにもなウケ狙いもスベッていなければ大好きです。

こういう「ためて、ためて、最後にドーン!」みたいな作品は、終盤の弾け方と落とし方(締めくくり方)に注目です。弾け方はできる限り派手に意表を突いて欲しいのですが、落としどころを誤るとリアリティが損なわれてしまいます。
個人的には戸梶圭太氏の落とし方が気に入っています(読んだのは2作品ですが・・・)。スッキリ感と「世の中そんなに甘くないな」みたいなリアリティのバランスが絶妙。
奥田氏の手並みはというと、リアリティが優先されています。最悪の状態から解き放たれた開放感はあるけれど、吹っ切らせるほどには登場人物を甘やかしていません。スタイルとしては一貫しているけど、序盤から中盤にかけて重たい展開が続くだけに、もっとスカッとした気分を味わいたかったな・・・
saiaku.jpg
  1. 2006-04-30 12:08:48
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