ぶっき Library... 小川洋子

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博士の愛した数式 (小川洋子)

こういう小説はわたしに向いてないみたいです。
80分しか記憶がもたない数学者、などという面白い設定を突きつけられると、この奇抜な設定を使ってどんなふうに楽しませてくれるんだろう!っという方向で期待が膨らんでしまうんですね。でもそういう小説ではないのですね。作者にはこの設定の面白さとか、その裏返しとしての切なさ・哀しさなんかを追求するつもりはないみたいで、ハートフルな愛の物語というコンセプトに即して便利に利用している感じなんですね。だからディテールが緩く感じられて、深く感情移入できなくて、期待は満たされませんでした。
琴線に触れたのは、毎朝目覚めるたびに自分の記憶障害を確認して打ちひしがれる、という場面くらい。でも、これもちょっと緩く感じられました。

作者の狙いがハッキリしている以上外野がとやかく言うことはないのだけど、以前読んだ『沈黙博物館』(別掲)がなかなか骨のある作品だったので(全体としては非現実的なんだけど、ディテールの作り込みは素晴らしくリアル!)、異なる方向で勝手に期待していたために、肩透かしな気分でした。

というわけで、あんまり突き詰めないで、ふんわりと心温まるタイプの小説なのですが、このタイプの作品としてはとてもきれいな仕上がりだと思いました。
hakasexaisitasusiki.jpg
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  1. 2006-04-30 12:01:34
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沈黙博物館 (小川洋子)

この作家の作品を読むのはこれが2作目です。以前『ホテル・アイリス』を読みましたが、わたしは感想を述べるに相応しい人間では無さそうなので、自主規制しました(笑)。

「昔々あるところにおじいさんとおばあさんが・・・」と同じノリ。固有名詞は徹底的に排除され、登場人物たちの動機や背景はぼかされています。その一方で個々の場面の情景や登場人物たちの言動は細やかに描かれています。
各場面の描写から動機や背景を類推することは可能ですが、作者が解答を与えてくれることはありませんし、それどころか宙ぶらりんになるように意図的に演出しているフシがあります。
たとえば、主人公の博物館技師は雇い主の娘に魅力を感じて露骨に優しい態度をとるけれど、彼女が別の男性に強く惹かれても(そのために博物館の仕事が疎かになりかけても)、やきもちを妬いたりいらだつことはありません。別に妬かないなら妬かないでもいいのですが、博物館技師の少女への思いのニュアンス(恋愛感情なのか、父性愛なのか、友情なのか、純粋な賛美なのか・・・)が曖昧にされたままになっています。博物館技師がこの物語の語り手であるにもかかわらず。
これは1つの例に過ぎなくて、作品全体を通して作者のポーカーフェイスは徹底しています。ここまで徹底していると、動機を類推したり寓意を読み取ろうとする読み方は拒否されているようにも感じられます。「読者は自由に想像を膨らませてください。それが正解です」とでも言うような。

このおとぎ話風のスタイルは文章の味わいにも大きく影響しているようです。
生々しさがなくて、浮遊感があります。風景や街並や祭りなどの一連の情景描写はどこか幻想的な美しさを醸し出しています。簡潔ながら効果は鮮やか。一方、おできを潰す、鼻をかむ、痰を吐くなどの動作が繰り返し描写されたり、微妙に猟奇的な場面があったりしますが、全然生々しさがなくて、不思議なくらい不快感がありませんでした。
また、おとぎ話っぽい雰囲気の中に細やかに描写される人や物のディテールが自然と浮き上がっていて、とても印象的。独特の効果が出ています。

登場人物たちの動機とか背景が明示されないまま、主人公は後半かなり不穏な立場に追い込まれていきます。文体のせいで緊迫感はありませんが、不気味な雰囲気がヒタヒタと迫ってきます。このあたりの演出は凄く効果的でした。

独自の作品世界に魅了されましたが、曖昧尽くしのほんわかした展開に中だるみを感じました。登場人物たちの動機とか背景がぼかされることの副作用として、読み手をグイグイと引っ張っていくストーリー展開の力は弱まっているように感じました。
そういう意味ではかなり思い切ったスタイルだと思います。
tinmokuhakubutukan.jpg
  1. 2006-04-30 12:01:12
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