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マルドゥック・ヴェロシティ (冲方丁)

印象的だった『マルドゥック・スクランブル』の続編。ただし、描かれているのは『マルドゥック・スクランブル』より前の出来事。前作同様3分冊。

本作の主人公は『マルドゥック・スクランブル』の敵役。『マルドゥック・スクランブル』を読んだのは1年4ヶ月前なので、頭の中でつながるまでに少し時間がかかる。が、どうやら前作を知らなくても支障無さそう。

文章は美しくない。うまいとも思わない。ただ、記号を駆使した表現にはスピード感があるし、熱気を帯びた文体には強い牽引力がある。
洗練されない前のめりな文章に、この作家の姿勢があぶりだされているのか(いい意味で言ってます)。

『マルドゥック・スクランブル』でも立ち上がりの鈍さを感じたけれど、本作はさらに鈍い。3分冊のうち2冊目の半ば頃までは、面白さを鈍重さが上回る。入り組んだ人間関係の煩雑さがこれに拍車をかける。
しかし、それ以降は力強いドライブ感で一気に読ませる。

『マルドゥック・スクランブル』ではヒロインである少女の覚醒の物語が圧巻だった。SFというジャンルを超えた面白さがあった。
一方の『マルドゥック・ヴェロシティ』は、SF、サスペンス、バイオレンス、ミステリーなど複数の顔を持つし、主人公の葛藤には説得力があるけれど、素性としてはジャンル色の強い作品。
前者は万人に勧めたい作品だけど、『マルドゥック・ヴェロシティ』はこの手の小説が好きな人たちにとって楽しい作品、と思う。
mv.jpg
  1. 2007-09-25 14:55:02
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マルドゥック・スクランブル (冲方丁)

3分冊という大作ですが、序盤こそやや足取りが重いものの、その後はのめりこむようにして一気に読み上げました。力作です。SFと暴力と賭け事を毛嫌いしない人だったら、十分に楽しめると思います。

基本はSFですが、+アクション&バイオレンスといったところでしょうか。

主人公は不幸な生い立ちの少女。
少年少女が主役となると、たいていは彼らの成長ぶりが描かれます。この手の成長物語は爽やかさを演出するためのネタとして便利に使われることが多くて、そういう小説(に限らないけど)はえてして雰囲気に流してお茶を濁しがち。感情移入して読んでいると梯子を外されることがしばしば。
そんなおざなりの成長物語にウンザリしているあなたにお勧めしたいのが『マルドゥック・スクランブル』!!!これはホンモノです。作者冲方丁は精魂込めてヒロイン覚醒のプロセスを描き切っています。それも純文学臭とか社会派臭を交えず、あくまでもエンタメの作法の中で。必ずしも成長物語として深かったり洗練されているわけではなくて、描かれている事柄そのものにも増して、そこから響いてくる作者のパッションに打たれました。

圧巻なのは第2巻から第3巻にまたがる長大なカジノのシーン。このシーンは冗長であり過ぎたり説明不足であったり文章に飛躍があったりと粗も多いのですが、渾身と言いたくなるほどの投入感があって、しびれました。

このヒロインには若い世代特有の飢餓感とか焦燥感みたいなのがリアルに鼓動していて、オッサンやオバサンが描く10代とは一線を画しています。冲方丁は1977年生まれの若い作家ですが、20代前半だからこそこういう生々しさが表現できたのかも。

読みづらいというほどではないにしても、粗削りで不恰好な作品です。委細かまわずパッションで描き切った、という感じ。
でも大枠で見ると、ポイントはしっかり押さえられているし、なかなか演出巧者と感じます。盛り上がりの作り方が堂に入っています。また、バイオレンスな格闘シーンは迫力・スピード感ともにバッチリだし(ただしところどころ分かりにくい)、SF的な大道具・小道具の面白さもあるし、なによりもキャラの造形が魅力的。キャラとしてのユニークな面白さがある上に、巧みに人間味が演出されていて、知らず知らず引き込まれてしまいました。
malducc-scramble.jpg
  1. 2006-04-30 07:14:31
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