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イリヤの空、UFOの夏 (秋山瑞人)

秋山瑞人作、4巻物のライトノベル。主人公は中学生。ありきたりのライトノベルとして読むとやや重たい。でも、人物設定とか序盤から中盤の展開はライトノベルの定石を踏まえているから、スカされることはないと思う。

ライトノベルの定石に則って読み手をくすぐりつつ、濃い描写でその枠を絶えず踏み越えようとするかのよう。
三人称視点ながら読者に提示される情報は制限するとか、時系列とは異なる順に場面が進められるとか、作者は積極的に駆け引きを仕掛けてくる。
ヒロイン伊里野を見舞う状況や症状は、学園ラブコメ展開の前半ですら、いくらか生々しい。
こうしたところに作者の自己主張を感じる。

3巻の半ばあたりから物語はシリアス路線に舵を切って急加速。終幕に向かって怒涛の展開。生温かくライトノベルを楽しむつもりの読者は振り落とされるかも。
読み終えてから振り返ってみると、ある種の典型的なパターンに則ったストーリー展開だけど、多弁なようで説明控え目な文体は、読んでいる最中に次の展開を容易に予測させない。そして想像力を刺激してくる。だから先が気になってどんどんページを繰ってしまう。

最終局面でのカタルシスは、気持ちいいけどやりすぎないのがいい。煽ったりしないのだけど、ポロポロと明かされる数々の事実からヒロインの切ない心情が自ずと浮かび上がってくる。思わず持っていかれてしまった。





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  1. 2012-09-02 21:10:39
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死亡推定時刻 (朔立木)

この作品では、冤罪の構造を提起する、という目的意識が先行していて、「冤罪をネタにした人間ドラマ」というよりも、問題意識を結晶化させたストーリー、という印象。
警察関係者や司法関係者らのありがちな我執や保身の連鎖が冤罪を生み出す構造が、丁寧かつ分かりやすく提示されていて、説得力抜群。

ドラマとしての彫は浅い。架空の物語をリアルに語る、という意味での手練手管とか妙味はさほど感じられない。
だが、彫が浅いなりに目は行き届いているし、少なくとも余計なことをしていない。
キャラに魅力や愛嬌はないけれど、作り物っぽさやご都合主義は見当たらない。

この小説のリアリティの拠り所は、描写がもたらす生々しさというより、専門家(法律関係)としての知識・経験、そしてブレや甘さのない適確なプロット。
読者を牽引する力の源は、真摯なアプローチが生み出す求心力。といっても暑苦しさはない。「あとがき」では思い入れがあらわだけど、本編はクールで着実。

社会派ミステリーらしい素っ気の無い筆致なので、作品世界に馴染むまで多少の我慢が必要かもしれないけれど、いったん流れに乗ってしまうと、ページを捲る手が止まらなくなるかも。

“芸”の魅力を感じられなかったから、この作家に興味を持てたとは言いにくいけれど(せめて、主役の弁護士のキャラがもう少し魅力的だったらなぁ・・・)、小説の形を借りた周到な問題提起としての『死亡推定時刻』は楽しめた。
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  1. 2007-04-16 21:56:29
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漢方小説 (中島たい子)

31歳の未婚女性の屈託と目覚めが軽やかに描かれている。

原因不明の不調で救急車のお世話になった主人公は、病院をはしごするうちに漢方に出会う。漢方を知るにつれて、主人公は、変化を恐れ、その恐れを克服しようとしていた自分に気づき、変化を受け容れる生き方に目覚める。
目新しさは無いものの、なかなかいいお話。

物語の軸である主人公とイケメン漢方医(?)との絡め方が淡いとか、全体に人物の存在感が薄いとか、ドラマとしての密度・濃度は乏しい。ただ、この薄さ・軽さはプラスともマイナスともとりうる。判定は読者のポジションに左右されそう。
というのは、この手の小説(とある属性の人物を等身大に描くタイプの小説)では、主人公に近い境遇の読者はもともと作品世界に同調しやすいから、重苦しいテイストだともたれてしまいかねなくて、むしろ『漢方小説』の軽さは好ましいかもしれない。
おそらく、そんな読者を念頭に置いた作品だろうから、だとしたら、的を射た出来栄えと言えそう。

小説の中身によっては軽さ・薄さが弱点になりうる気がするし、個人的にはこの作品でもちょっと気になったけれど、総合的には、日常の中での何気の無い出会いと心の変化が、簡潔かつ軽やかに描かれた快作、といえそう。
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  1. 2007-03-26 18:53:44
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パプリカ (筒井康隆)

筒井康隆はわたしが中学生くらいのときから人気のある作家で、現在は三島賞の選考委員なんかをやっている。目新しいアイディアを精力的に形にする作家のようだけど、数作しか読んでないけれど、『時をかける少女』以外では感心したことがない。


『パプリカ』は、この作家の断筆宣言前の最後の作品。ノーベル賞候補者である女性サイコセラピストの冒険が描かれている。

おそらく、終盤のめくるめくような展開がこの作品のポイントなのだろう。確かに、緩みの無いストーリー進行とあいまって、楽しませてもらった。

でも、全体的には安っぽい印象。キャラ設定とかプロットが安易。
ヒロインが施す心理療法は陳腐で説得力が無い。また、彼女が直面する危機の多くは、軽率な言動が招く自業自得。これまた説得力が無い。
さらに、彼女はデブでブ男の同僚に恋愛感情を寄せているのだけど、設定のための設定という感じで、味気ない。
これらに加えて、悪役の人物造形はあきれるくらいに類型的。
時間つぶしの小説かな。

筒井作品は数えるほども読んでいないけれど、一貫して感じるのは、アイディアに小説的リアリティを与える筆力の欠如。

でも、この作風で文壇で生き残ってきたということは、わたしの気がつかない、何か凄い部分があるのだろう。
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  1. 2006-12-03 10:20:17
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バカの壁 (養老孟司)

2003年を代表する大ベストセラー。たぶん2004年頃に購入し、先日まで放置してました。引越しの荷作り中に発掘。

これはなかなか難しい本だなぁ~、という実感。

というのは、理屈を追いかけるだけでは限界があって、養老孟司が提唱する思考形態を我が物とするか、せめてその状態を想像できなければ、作者の意図を感受することは難しそうだから。そうなるためには、頭でっかちに生きる自分を捨て去るないしは突き放す、という生きる上でのブレークスルーが必要不可欠で、それはこの本を精読するだけで手に入るとは限らないだろう。

たとえば、序盤での“個性より共通性を追求すべき”という主張は比較的容易に受け容れられそうだけど、その理屈の延長線上にある中盤の「実際には意味について考え続けること自体が大切な作業なのです」という一文をすっかり飲み込むためには、ある程度の地ならしが必要になると思う。
まあ、それらのことを難なくやってしまうような、頭のいい人たちもいるんだろうけど・・・

この本を難しくしているのは、ここまでに述べた本筋の捉え難さに加えて、不用意な言葉のチョイス、不適切な比喩、短絡的な決め付けにまみれていること。
科学者だけあって、科学的な記述には信頼が置けそうだけど(それを判定できる知識はわたしにはありませんが)、理論を実社会・実生活に敷衍するやり方はぐだぐだ。
『バカの壁』は口述筆記なので、ある程度論理展開が粗くなるのは仕方がないのかもしれないけれど、それにしても・・・

つまり必ずしも出来の良い本とはいえないわけで、そのまま読んでしまうといろいろと引っ掛かりが出そうなので、そんな中から自分に役立ちそうな何かを掘り出すつもりで読むのが吉。
そういう意味で有益な本でした。自分を生きるとはどう生きることなのか。ヒントをもらいましたよ。
ちなみに、頭の使い方のHowTo本、みたいな読み方はしませんでした。そういう本なのかなぁ・・・!?
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  1. 2006-09-17 19:04:44
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シャングリ・ラ (池上永一)

近未来SF娯楽大作。
現代のSFらしく(?)経済的な要素なんかも大幅に取り込まれていて、舞台設定にはなかなか厚みがありますが、進行につれて荒唐無稽な色合いが強まるし、キャラ設定とストーリー展開はキャラ萌え系アニメに通じるノリ。

アニメ的なノリをどう受け止めるかは人ぞれぞれでしょうが、少なくとも読みやすさには貢献しています。二段組の大冊で、ただでさえ圧迫感があるところに、状況設定とかディテールをダラダラ描写されたらウンザリしてしまいます。その点、『シャングリ・ラ』には停滞感がほとんど無くて、快適に読み進めました。


個人的には、終盤にかけてキャラ頼みの度合いが高くなったり、オカルト的な色合いが濃くなったり、というのは好みではありません。オカルトの要素が入るのは良いのだけど、なんかお約束的で・・・
また、自らの異常な出生にすんなり適応してしまうヒロイン國子の人物像は物足りないし、美邦の人間的な成長の描かれ方もしっくり来ないし、モモコや小夜子や涼子には後半以降キャラとしてマンネリ感を覚えます。アニメキャラと考えたら、こんなものなのかもしれませんが・・・

が、この手の小説(狭義のエンタメ)では、最後まで一気に読まされたら作者の勝ち、というのがわたしのスタンス(好みは好みとしてありますが)。『シャングリ・ラ』は快作です。
もちろん、こまごまとした不満が、同作家の他の本を手に取ることをためらわせる余地はありますが・・・
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  1. 2006-09-15 14:28:46
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土の中の子供 (中村文則)

第133回芥川賞受賞作。

スンナリと読み通せたし、主人公の心理描写には説得力があるし、ラストシーンでの主人公のセリフは響いてきたから、悪くはない。でも、悪くはない、止まりかな。読んで損したとは思わないけれど・・・

この人がやろうとしていることはなんとなく分かるけど、それに意味を感じられない。主人公の閉塞感を浮き彫りにする、という演出意図は分かるけど、それをすることで何が生まれるのか?
2005年産だから、よもやトラウマを紹介するつもりではないだろう。題材としては思いっきり鮮度が低い。では、目新しいないしは独自の切り口で料理しているのか?そうでもない。下手とかではないけど、ハッとするものは無い。

独自性よりも、堅実路線で完成度を狙っているような気がするけれど、誇れるほどの完成度はない、と思う。
主人公と同棲相手の関わりなんかはちょっと甘いし、それを言うなら、同棲相手のキャラそのものが弱い。下手とかではないし、演出に工夫が感じられるけれど・・・

『土の中の子供』に現代性は見当たらないから、こういうテイストの小説を読みたければ、昭和の時代の純文学を漁れば、もっと高密度で完成度の高い作品がゴロゴロしていそう。
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  1. 2006-08-11 18:29:36
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