ぶっき Library... 浅倉卓弥

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北緯四十三度の神話 (浅倉卓弥)

不幸な生い立ちではあるけれど、ぶつかったりスレ違ったりするけれど、それでも本気で悩んで分かり合おうとする一組の姉妹の物語。

これは人の心の上澄みだけで作られたキレイごとだよね。
でも、そのキレイごとに泣かされてしまった!
何で姉妹愛を描いた小説に泣かされるかな~、オレ

浅倉さん(作者ね!)はマジだね。
この人は信じてるよ。あるいは本気で願っているね。あやふやな願望とか憧れじゃなくてね。

キレイごとなんだけど、作り話なんだけど、人の心の揺らぎを何と細やかに描くんだろう!
思いっきりベタなんだけど、どこまでもありがちなんだけど、安っぽくならないのね。やり過ぎてないもんね。嫌なあざとさがなくて、上品で口当たりイイのね。

妹のラジオでのしゃべりが堅すぎんだろ~、とか、婚約者の死に際のセリフはどうなんだろー?、とかは思ったけど、すごくよく出来てるよね、この話。

でも泣くとは思わんかった~
なにしろ姉妹愛を描いた、キレイごとの作り話だからね~

まあ、作者は同世代のオッサンなんだけどね。


《ちょっと補足》

わたしはウルウルきましたが、スイッチが入るポイントは人それぞれ。

人間は、他人の心の中が分からない、というスペックになっています。分からないから、分かりたいと願い、そして疑心暗鬼になる。相手が大切な存在であれば、なおさらこの葛藤はシビアになります。浅倉さんは、このタイプの心の揺らぎがお得意みたいで、『四日間の奇蹟』でも巧みなたずな捌きでした。『北緯四十三度の神話』では、葛藤ゆえに自分の気持ちさえ見失ってしまう、というひねりが加わっています。

このパターンはわたしのツボみたいです。これだけじゃないけど。ちなみに、恋人が死ぬだけ、みたいなのはさっぱり。
わたしとツボが近そうな人はぜひお読みください。

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  1. 2006-04-29 17:02:51
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君の名残を (浅倉卓弥)

現代人3名が源平の時代にタイムスリップして・・・という物語。『平家物語』が下敷きになっているようです。

安定した筆致はすごいと思いました。ゆるぎなく感じられました。これがデビュー2作目とは思えませんでした。

でも、つまらなかった・・・。SFファンタジーにも歴史小説にもなれてない感じ。どっちつかず。

タイムスリップした3人はえらくスンナリと源平の時代に馴染んで、歴史上の役割に即して動き始めます。時代のギャップが生み出す面白さや、タイムパラドックスめいた演出は皆無。現代からタイムスリップしたという設定に必然性が感じられませんでした。SFファンタジーとしての面白さはまったくありません。

歴史小説としても楽しめなかった。
作者の視点が感傷に流れがちなので、単眼的で一本調子。群像劇でこれをやってしまうと盛り上がらないと思います。登場人物が作者の手を離れて自分の意思で動き回っているように感じさせてくれないと。
無常観めいた線を狙っているようだけど、ミエミエって感じで興醒めしました。

ページをめくらせる力には2種類あって、1つは「次に何があるんだろう!?」という刹那的な期待感で、2つめは「結末はどうなるんだ!?」という全体を見通しての期待感。どっちも無いとページをめくる気力が失せてしまいます。全体としては『平家物語』をなぞっているだけだし、作者の操る手が透けて見えるのでページをめくる手が弾まない。
わたしにとってはそんな作品でした。
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  1. 2006-04-29 17:01:11
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四日間の奇蹟 (浅倉卓弥)

ネタバレっちぁネタバレです。

第1回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞金賞受賞作ですがミステリーではありません。

死に瀕した女性の人格が他人に乗り移って自分の人生を見つめ直す、という展開を軸に、登場人物たちの心の癒しと救済が描かれた感動作。と言っても重苦しい話ではなくて、そこそこ長いにもかかわらず一気に読めてしまいます。

死に瀕した女性の人格が他人に乗り移る、という筋立てには前例がありますが、当然作者はそれを分かった上で執筆したのでしょうから、オリジナリティを云々するのは野暮でしょう。どう料理しているかがポイントだと思います。

こういうタイプの作品ではプロットにモロに作者の人生観が反映されます。人生観が浅薄に感じられたり、人生観をプロットに因数分解していく手並みが拙く感じられると、わたしの心は凍りついてしまいます。「泣ける」という触れ込みの小説がまるで心に響いてこない場合、大半はここがネックになっています。個人的には、この点がクリアされているなら他の部分ではかなり妥協出来ます。

『四日間の奇蹟』は、一つの出来事を通して複数の登場人物の癒しと救済を描き切る、という高いハードルを危な気なくクリアしていると思います。謳われている人生観そのものはさして奥深いものではなくて、むしろありがちな感じなのですが、とても丁寧に扱われていて説得力があります。テーマが登場人物たちの言動に無理なく結びついていて、安心して読み進めます。気持ちよく作者の敷いたレールに乗れて、心置きなく感動に浸れました。

ラストの落とし方には好みが分かれるかもしれません。主人公=語り手の癒しと救済の場面はちょっと作り過ぎているように感じられました。ただし、この手の作品では誰もが満足する幕引きというのは難しいと思います(読者の思い入れが強く出てしまいがちだから)。
ついでに言うと、ヒロイン(真理子)はすごいおしゃべり女で、他人のプライバシーとかジャンジャンしゃべりまくるのですが、ちょっとウザイ感じがして感情移入の妨げになりました。
あとは、ところどころ(療養所のシステムや人物の紹介、ヒロイン(真理子)の過去等)説明臭くなるのが気になりました。
とは言え、いずれも爽やかな感動を損なうほどのキズでは無い、と感じました。

yokkakanxkiseki.jpg
  1. 2006-04-29 17:00:27
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