ぶっき Library... いしいしんじ

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ポーの話 (いしいしんじ)

これは単なる寓話(教訓や風刺を織りこんだ物語)ではなくて、この物語にはいしいしんじの人生観の深いところが託されていて、そしてそれが物語を規定しているから、物語性や独特のタッチに酔うだけでは水面の照り返し(=反射)を見ているに過ぎなくて、またそういう読み方では第三部で物語を見失ってしまうはずで、作者に同調したければ物語の水面下深くに潜らなければならない(水面の喩えは本作品からのパクリ)。

過去に読んだいしい作品(『プラネタリウムのふたご』『麦ふみクーツェ』)と風合いは似ているけれど、同じような読み方では太刀打ちできないはず。『ポーの話』は技巧的な純文学作品であり、羊の皮を被った狼。

いしいしんじは、ポーの気づきのプロセスを川から海への行程になぞらえ、テーマに即して緻密にそして力強く物語を構成していく。
三部構成で、第一部~第二部は童話風の冒険譚として楽しめるけれど、ポーが海に出た第三部では暗喩が張り巡らされ、物語は一気に観念的な様相を呈する。大うなぎを飲み込むことで罪悪感を我が物とし、海を旅しながらつぐない(ここでの“つぐない”は生き方)、人形の破片を追って海深く潜ることでつながりを、自らの幸福を知る。

深い思いが込められた力作ではあるけれど、描こうとしていることと、実際に描かれていることのギャップが大きすぎないか?罪悪感とか、つぐないたい気持ちとか、人とつながっているという感覚とか、そうした抽象的なものが、共感しやすい具体的な感覚に還元し切れていない(暗喩であることを考慮しても)、と感じた。
少なくとも、わたしは物語に身を委ねるだけではテーマに到達できなかった。上述の作品理解は、キーワードを追いながら読解する、という渋々の作業の結果。そもそも、多くのことが意図的にぼかされているように感じられる。
pooxhanasi.jpg
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  1. 2006-04-30 06:18:03
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プラネタリウムのふたご (いしいしんじ)

う~ん、意外なくらい入り込めなかった。途中からほぼ斜め読み。『麦ふみクーツェ』は楽しんで読めたんだけどなぁ。どこに引っかかったんだろう。

たぶん原因は2つ。

1つ目は登場人物に入り込めなかったこと。特に主人公の二人のキャラが立っていない。
『麦ふみクーツェ』のような一人称語りなら読み手は語り手=主人公のキャラに入り込まざるを得ないわけだけど、『プラネタリウムのふたご』は三人称語り。読み手を引き入れる仕掛けが必要なはずだけど、物足りなかった。とりわけ双子の子供時代が手薄。双子の子供時代の屈折した心情とか泣き男が双子に寄せる思いなんかは、もっと強く打ち出して欲しいと思った。

2つ目は散漫なストーリーテリング。
テーマに絡んだ伏線は張り巡らされているけど、読み手を先へ先へと駆り立てるような推進力は感じなかった。つまり、終盤にきて「なるほどそういうことだったのか」とは思えるけど、読んでいる最中に「この後どうなるんだろう・・・ワクワク」とはなれなかった。淡々とエピソードを連ねていく足取りはなるほど童話っぽいけれど、長丁場を維持するとなればもっと仕掛けが必要だと思った。
たとえば、双子は別れ別れになって対照的な経験を積むことになるけど、全然ドラマティックじゃない。また、ユニークなキャラはたくさん出てくるけど、彼らと双子との関係自体は類型的でドキドキできない。
インパクトのあるテーマじゃないだけに、作品全体を串刺しするような大きな仕掛けが欲しいと思った。

終盤になって感動的な場面が続くけどあざとく感じられて、「おまえは浅田次郎か!」と突っ込みを入れてしまった。物語に入り込めなかったので、取って付けたように感じたんでしょう。

プラネタリウムでの泣き男の語りとか幻想的な情景描写とか、魅力的な雰囲気はさすがだし、作者の優しい眼差しには心惹かれるものがあります。残念ながら騙され下手(?)なわたしは物足りませんでしたが、雰囲気にスーッと入っていける人は楽しめるんじゃないでしょうか。
puranetariumxhutago.jpg
  1. 2006-04-30 06:17:33
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麦ふみクーツェ (いしいしんじ)

童話っぽいスタイルで、ハンディキャップとか心の傷とかに負けないで前向きに生きていくことの大切さみたいなものが描かれています。とは言え、全然説教臭い感じは無くて、豊かな想像力と優しい眼差しがなんとも印象的です。

こういうファンタジックなスタイルは人物とか世界を作品コンセプトに即して自由に設定できるから抽象化されたテーマを描くには効果的ですが、豊かな想像力で世界を構築できないと様になりません。個人的には、まったりほんわかというよりも、「こんな世界を描けるなんて、頭の中はどうなってんだろ?」と思えるくらいイマジネーションとかインスピレーションで圧倒してくれるタイプが好みです。喩えて言えば、文学的宮崎駿ワールドみたいな。

『麦ふみクーツェ』には後述するような物足りなさがあって浸り切るまでには至らなかったけど、世界がちゃんと構築されているし、登場人物はユニークで魅力的だし、伏線を効果的に使った演出が長丁場を支え切っているし、楽しませてもらいました。
童話の風合いを活かしながら大人が読み応えを感じられるだけの作り込みがされていて、魅力的なスタイルだと感じました。ファンタジーと現実感を織り交ぜたスタイルなのでけっこう今風です。
この手の物語が嫌いでなければ十分に満喫できると思います。

それと音楽の悦びを感じさせてくれます。

既読の方じゃないと分からないと思いますが、物足りなかったのは以下の点です。
クーツェを使うことの効果が不十分に感じられた(主人公と祖父の絡みが不十分とも言えそう)とか、三千年の記憶を持つ生まれ変わり男のキャラが立ってないとか、主人公と緑色の心の触れ合いをもっと細やかに描いて欲しいとか、主人公が家族の過去を知る場面(かなり大切なところなのに)が駆け足なので余韻が無いとか。楽しめたけど幸せになれなかった原因はこのあたりかな。
mugihumicootue.jpg
  1. 2006-04-30 06:17:06
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